Facebook 広告申請できない?要件12項目と入稿・審査ガイドを徹底解説

Facebookで広告申請が進まない原因は、権限不足や支払い設定、本人確認、ポリシー違反、入稿不備など多岐にわたります。本記事は「申請要件と適格性」「支払い・本人確認」「広告ポリシー」「審査フロー」の4章で、必要書類と入稿・再提出のチェックを整理。迷わず通すための実務要点をやさしく解説します。

 

申請要件とアカウント適格性

Facebook(Meta)で広告申請が進まない多くのケースは、アカウントの権限・連携・所有権・支払いの4要素に未整備があるためです。まずは「広告アカウントの役割(管理者/広告主/アナリスト)」「ビジネスポートフォリオ(旧BM)への人・ページ・広告アカウントの追加と割り当て」「ページと自社ドメインの所有権確認」「支払い方法・請求情報」の順で整合性を見ます。役割は広告作成だけでなく請求の編集可否にも関わるため、申請担当に必要なレベルを付与します。

ページはビジネスポートフォリオに追加し、必要に応じて所有権申請や承認を実施。ドメインはメタタグ・DNS・HTMLアップロードのいずれかで認証します。最後に「請求と支払い」で支払い方法の追加・更新、支払いアクティビティの確認まで終えてから入稿テストを行うと、差し戻しやステータス保留を防ぎやすくなります。

 

要素 確認ポイント 主な確認先
権限 申請・請求編集に必要な役割が付与済みか ビジネス設定→ユーザー/アカウント(広告アカウントの役割)
連携 ページ/IG/広告アカウント/ピクセルの割り当て Business Suite/ビジネス設定→アカウント/データソース
所有権 ページ追加承認・ドメイン認証の完了 ページ追加/所有権申請、ドメイン認証画面
支払い 支払い方法・住所表記・活動履歴の整合 広告マネージャ→請求と支払い/支払い設定
整備の優先順
権限→連携→所有権→支払いの順で確認し、各工程ごとにテスト入稿→差し戻しゼロを狙いましょう。

広告アカウントの権限と役割区分

広告アカウントには少なくとも「管理者」「広告主(キャンペーン管理)」「アナリスト(閲覧)」の役割があり、編集・入稿・請求編集の可否が異なります。

申請が進まない典型は、申請担当者が「アナリスト」や一部権限のみで、入稿や支払い編集が許可されていないパターンです。役割はビジネス設定または広告マネージャから付与でき、請求関連を扱う担当には管理者レベルを付与しておくと実務が滞りません。

 

代理店や社外パートナーには「パートナーとして追加」し、必要なアセット(ページ/広告アカウント/ピクセル等)単位でアクセス権を付与します。運用では、役割付与→招待承認→アセット割り当て→動作確認の順でチェックリスト化しておくと、申請エラーの再発を抑えられます。

役割 できること 注意点
管理者 広告作成/編集、請求・支払い編集、権限管理 申請・請求のボトルネック回避に推奨
広告主 広告作成/編集、レポート閲覧 請求編集不可→別途管理者が必要
アナリスト 閲覧・レポート出力 入稿不可→申請担当には不十分
  • 手順→ビジネス設定→ユーザー→追加→役割選択→アセット割り当て→相手側で承認。
  • 代理店連携→パートナー追加でビジネス間共有を行い、権限の過不足を防止。
権限設計のコツ
請求対応者は管理者、入稿担当は広告主、レポート担当はアナリストの三層に分けると安全です。

ビジネスマネージャー連携の必須要件

入稿の前提として、ビジネスポートフォリオ(Business Suite/ビジネスマネージャ)に、人・ページ・広告アカウント・Instagram・データソース(ピクセル/カタログ等)を正しく紐づけます。

ページは「設定→アカウント→ページ→追加」から既存ページを追加し、必要なら所有権の承認フローを通します。広告アカウントも同様に追加し、担当者へアセット単位でアクセスを割り当てます。

外部パートナーと運用する場合は「パートナーを追加」を使い、共有したいアセットのみを指定して安全に権限を渡します。これらの連携が完了していないと、申請画面に該当ページやアカウントが出てこない、または入稿時にエラーになることがあります。作業はスクリーンショットで記録し、変更履歴を残しておくとトラブル時の切り分けが容易です。

 

対象 連携内容 備考
ページ/IG アカウント→ページ/Instagram→追加 必要に応じて所有権承認が発生
広告アカウント アカウント→広告アカウント→追加 役割付与とアセット割当を同時に実施
パートナー パートナーを追加→共有アセット選択 ビジネス間で安全に権限共有
  • 不具合例→ページが選べない→所有権未承認/追加手順の未完了を確認。
  • 記録→「誰に何のアセットを付与したか」を台帳化して権限の過不足を防ぐ。
連携チェック
入稿前に「ページ・広告アカウント・IG・ピクセル」の4点がポートフォリオ内に揃っているかを確認しましょう。

ページ・ドメイン所有権の証明手順

ページはビジネス側で「既存のページを追加」し、必要に応じて所有権申請→承認を経て管理下に置きます。承認がないとページの選択やブランド関連の設定が進まないことがあります。

ドメインは、メタタグをHTMLの<head>へ追加、DNSレコードの追加、ルートディレクトリへのHTMLファイル配置のいずれかで認証します。いずれもビジネスポートフォリオの「ブランドセーフティ→ドメイン」から対象ドメインを追加し、手順に従って検証を完了します。

認証はなりすまし防止やイベント計測の整合に役立ち、広告審査でも整備済みであるとトラブル時の切り分けが容易になります。複数ドメインを扱う場合はトップレベルのドメイン単位で登録しておくと運用が安定します。

 

対象 方法 ポイント
ページ ページ追加→(必要なら)所有権申請/承認 承認者は全権限保有者であること
ドメイン メタタグ/DNS/HTMLアップロードのいずれか 追加後に検証を実行→成功表示を確認
  • 具体例→LPを「example.jp」に統一し、サブドメインも包含できる構成で認証を実施。
  • 変更時→CMSやCDNでキャッシュが残る場合があるため反映待ちを考慮。
所有権チェック
ページの承認とドメイン認証が未完だとリンク整合やブランド表記で差し戻しが増えます。入稿前に完了を。

支払いプロファイルと請求情報整備

入稿以前に「請求と支払い」で支払い方法と事業情報を整えます。広告マネージャの支払い設定から、クレジット/デビット/(提供地域により)その他の方法を追加し、住所・会社名・電話などの表記を請求書と一致させます。失敗が続くと申請や配信が保留になるため、カードの有効期限・限度額・名義一致・請求先住所の整合も確認します。

「支払いアクティビティ」で履歴とステータスを確認し、必要に応じて支払い方法の編集・追加を行います。月次運用ではメインと予備の二重化を推奨し、予算増額月は請求日とカード上限を事前に確認しておくと安心です。

 

項目 整備内容 確認先
支払い方法 カード追加/更新、予備手段の登録 広告マネージャ→支払い設定
請求情報 会社名・住所・電話の整合 請求と支払い→ビジネス情報
支払い状況 支払いアクティビティ/未払いの有無 請求と支払い→アクティビティ
  • 実務例→カード更新月は入稿前に新カードへ切替→テスト決済→保留の防止。
  • 台帳化→請求先表記のテンプレを作り、各アカウントで統一管理。
請求まわりの基本
「支払い方法の二重化」「表記の統一」「アクティビティ確認」をルーチン化すると申請保留を防げます。

支払い設定・本人確認・ビジネス情報

広告申請が止まる原因の多くは「本人確認(個人/企業)」「支払い方法と請求情報」「ビジネス情報(名称・住所・連絡先)」の不一致にあります。特に、広告マネージャの「請求と支払い」での表記と、ビジネス情報、LPや会社サイトの表記が食い違うと、審査や請求処理が保留になりやすいです。

まずは、支払い方法の有効期限・名義・請求先住所を確認し、本人確認やビジネス認証が未完なら先に完了させます。企業利用では、会社名(正式名称/略称)、所在地、電話、ドメインの所有者が一貫しているかが重要です。

入稿前に「支払い設定→支払いアクティビティ」の未払い有無を確認し、予算増額月はカード限度額や請求サイクルを見直します。表記・認証・請求の三点を整えてから入稿に進むと、差し戻しやステータス保留を大きく減らせます。

 

要素 ありがちな不備 最初の確認先
本人確認 提出書類の不備・住所相違 本人確認/ビジネス認証の進捗
支払い カード期限切れ・名義不一致 請求と支払い→支払い設定/アクティビティ
ビジネス情報 会社名・住所・電話の不一致 ビジネス情報/LP表記/請求書の整合
  • 先にやること→本人確認の完了・支払い方法の二重化・表記(会社名/住所/電話/ドメイン)の統一。
  • 困ったら→小額のテスト入稿とテスト決済で早期に不備を発見。
整備の順番
本人確認→支払い方法→ビジネス情報→テスト入稿の順で確認すると、申請保留を最短で解消できます。

本人確認書類とアカウント認証要件

本人確認(アカウント/ビジネス)は、広告申請や一部機能の利用に必要になることがあります。個人の場合は公的身分証(運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど)、企業の場合は法人名義の登録書類(登記簿の写し、事業者名と住所が確認できる書類)を用意します。

提出情報は「アカウント名/会社名・住所・電話」と一致している必要があり、古い住所や略称の混在は差し戻しの原因です。追加で、二要素認証の有効化、業種によっては追加の本人確認(例:政治・社会課題関連での認証)を求められることがあります。

提出時は、書類画像の四隅が映るように撮影し、氏名・住所・発行日が判読可能かを確認しましょう。進捗は管理画面から確認でき、不備があれば差し戻し理由が表示されます。

 

区分 主な書類 チェックポイント
個人 運転免許証/パスポート 等 氏名・住所・生年月日の鮮明さ/有効期限
企業 法人登録書類/公共料金請求書 等 会社名・所在地が最新/略称ではなく正式名称
追加認証 領域別の追加要件 求められた範囲のみ提出し整合を担保
  1. ビジネス設定で認証の有無を確認→必要なら開始。
  2. 書類の撮影/スキャン→氏名・住所・発行日の判読を確認。
  3. 提出→進捗を確認→差し戻し時は該当項目を修正再提出。
提出前チェック
「正式名称・現住所・連絡先」の一致、二要素認証の有効化、画像の鮮明さの3点をそろえてから提出しましょう。

支払い方法登録と決済失敗時の手順

支払い方法は入稿前に「メイン+予備」を登録しておくと安全です。カードの場合は有効期限・名義・請求先住所・与信枠を確認し、通貨や請求サイクルも運用に合うか見直します。

決済失敗は「期限切れ」「限度額到達」「名義・住所の不一致」「カード会社のセキュリティ判定」などが典型です。まず「支払いアクティビティ」で未払いの有無と失敗理由を確認し、原因に応じてカード情報を更新、上限の引き上げ、請求先住所の表記統一を行います。

小額のテスト決済や、請求日付近の予算急増を避ける工夫も有効です。継続的に失敗が出る場合は、予備手段に切り替え、カード会社へ本人確認の実施可否を問い合わせます。請求情報とビジネス情報の表記が一致していないと、審査や請求処理が止まることがあるため注意しましょう。

 

症状 主な原因 対処
決済が失敗 期限切れ・限度額超過 カード更新/枠調整・テスト決済で再確認
申請が保留 名義/住所の不一致 請求書と同じ表記に統一→再試行
断続的に失敗 セキュリティ判定 カード会社へ事前連絡・予備手段に切替
  1. 支払いアクティビティで失敗理由を確認。
  2. 原因に応じてカード更新/住所表記の統一/上限見直し。
  3. 予備手段へ切替→小額で再試行→安定後に本運用へ。
よくある落とし穴
カード名義・住所の表記ゆれ(株式会社/(株)・全角/半角)が原因のことがあります。請求書と完全一致にそろえましょう。

ビジネス情報の整合性と法令適合性

審査では、広告主情報がビジネス設定・請求情報・LP/会社サイトで一貫しているかが重視されます。会社名は登記上の正式名称を基本とし、略称を使うならLP側も同じ略称を明示します。住所は建物名・部屋番号まで統一し、電話番号は固定と代表携帯のいずれかに一本化。

さらに、LPのフッターには運営者情報(会社名・住所・連絡先)、プライバシーポリシー、利用規約、問い合わせ窓口を整備します。業種によっては追加の表示が必要な場合があるため、該当業種の表示義務・品質表示・注意事項をあらかじめ確認し、広告表現とLPの記載をそろえます。整合性が取れていれば、審査側の確認がスムーズになり、差し戻しのリスクが下がります。

 

項目 要点 チェック
会社名 正式名称を基本/略称は統一 広告・請求・LPで同一表記か
住所 番地・建物名・部屋番号まで統一 郵便物や請求書と一致するか
連絡先 電話/メールの一本化 LPの問い合わせ導線が明確か
  • LPの必須→運営者情報・規約・プライバシーポリシー・問い合わせの4点をフッターに常設。
  • 表現の整合→広告の主張とLPの記載を一致させ、誤解を招く言い回しを避ける。
整合性チェック5点
会社名・住所・電話・ドメイン・LP表記の一致を確認し、審査前にスクリーンショットで保存しておくと追跡が容易です。

広告主名・住所・電話の表記ルール

表記は「読み手に誤解なく、審査側が即時に照合できる」ことが基準です。広告主名は法人なら正式名称を基本にし、(株)/株式会社、全角/半角、記号の有無などの表記ゆれを避けます。

住所は郵便物が届く正式表記で、丁目・番地・号・建物名・部屋番号まで統一します。電話は代表番号を一本に決め、LP・請求情報・ビジネス設定で同じ番号にします。海外表記を使う場合は、広告・LP・請求でローマ字表記をそろえます。実務では「表記テンプレ」を作り、入稿担当者がコピー&ペーストで流用できる状態にしておくと、表記ミスが減り、審査もスムーズです。

 

表記 良い例 注意点
会社名 株式会社サンプル(略称:サンプル) (株)/株式会社の混在や英字略称のみは避ける
住所 東京都◯◯区◯◯1-2-3 ◯◯ビル5F 丁目/番地/号・建物名の欠落に注意
電話 03-1234-5678 部署直通と代表を混在させない
  • 例→請求情報:株式会社サンプル/東京都◯◯区◯◯1-2-3/03-1234-5678。
  • LP・ビジネス設定・広告管理画面も上記と完全一致に統一。
表記テンプレ化
会社名・住所・電話の決定版テンプレを1枚にまとめ、入稿・請求・LPで共通利用するとミスを防げます。

広告ポリシーとクリエイティブ要件

Metaの広告は、媒体の広告ポリシーと各国の法令の両方に適合している必要があります。大枠では、違法品、成人向け、扇情的表現、偽情報、差別的行為、個人の特性を示唆する表現などが禁止対象です。

アルコールや金融、医療・健康関連、社会問題・選挙・政治は制限対象で、年齢や地域、表現方法、必要な開示や証憑など追加条件が課されることがあります。

審査では広告文と画像・動画、さらにリンク先のランディングページの内容や表記、運営者情報の整合まで確認されるため、広告とLPで主張や注意書きをそろえることが重要です。とくに高リスク領域は要件が変わりやすいため、最新のポリシーを定期点検し、根拠資料や承認書類を社内で保管する運用を標準化すると差し戻しを減らせます。

 

区分 主な内容 留意点
禁止 違法品、成人向け、扇情的表現、偽情報、差別的行為 広告文・画像/動画・LPの全体が審査対象
制限 アルコール、医療/健康、金融、政治/社会問題 年齢/地域設定や開示・証憑など追加要件
  • 基本チェック→媒体ポリシー順守→関連法令順守→広告/LP表記の一致

 

広告ポリシーと禁止・制限コンテンツ

禁止対象には、違法薬物や武器、成人向け・露骨な描写、扇情的表現、偽情報、差別的な表現、個人の特性を示唆する文言が含まれます。制限対象はアルコール、医療・健康、金融、社会問題・選挙・政治などで、年齢・地域制限や追加認証、開示文面、根拠資料の提示が求められる場合があります。

いずれも広告素材だけでなく遷移先のLPが審査範囲で、LPの運営者情報(会社名・住所・連絡先)、プライバシーポリシー、利用規約、申し込み導線の明確さが不十分だと差し戻しの原因になります。

運用面では、入稿前にリスク領域を棚卸しし、軽量版クリエイティブで事前テスト→問題がなければ本番クリエイティブへ拡張、という段階的な進め方が安全です。金融・投資・副業などは詐欺対策が強化されやすいため、企業実在性の証憑や商品条件、手数料・リスク開示の整備を優先しましょう。

 

分類 代表例 審査で見られる点
禁止 扇情的/暴力的表現、偽情報、違法薬物/医薬品販売、差別 画像/文言/LPの整合、誤解・過度な刺激の有無
制限 アルコール、健康/医療、金融、政治/社会問題 年齢/地域設定、追加認証、開示・証憑の有無
  • LP整合→会社名/住所/連絡先/ポリシー表示を明確化し、広告主張と一致させる
やりがちな違反
個人の特性示唆(「あなたは○○に悩む」等)や過度なビフォーアフター、断定的な誇大表現は不承認の典型です。

表現・誇大表示・実証のエビデンス

訴求は「真実性・明確性・根拠提示」を満たす必要があります。健康・美容・ダイエット・サプリ等では、結果の断定や過度なビフォーアフター、専門家の保証を想起させる表現が不承認になりがちです。

効果主張は条件や期間、対象者数(N)などを明示し、統計や調査の出典を社内で保管します。画像は同条件・未加工が基本で、視覚的な変化を誇張しないことが重要です。

LP側でも同じ主張・数値・注意書きを繰り返し表示し、問い合わせ窓口や返品条件、定期購入の解約条件など、意思決定に必要な情報を分かりやすく提示します。クリエイティブ制作時は、主張の種類ごとに必要な根拠をひも付け、更新時に旧版を破棄→最新版のエビデンスへ差し替える運用を徹底すると、差し戻しと炎上の両方を防げます。

 

主張タイプ 必要な根拠例 注意点
効果・効能 臨床/試験データ、第三者検証、条件の明記 断定を避け、期間・条件・Nを併記
ビフォー/アフター 未加工画像、同条件撮影の証跡 過度な誇張・加工はNG、撮影条件を明示
推奨・監修 実在組織/専門家の正式同意書 「医師が保証」などの断定的表現は避ける
  • LP一致→広告とLPの主張・数値・但し書きを完全一致にする
根拠管理の型
数値主張の出典や撮影・試験条件を台帳化し、改版時は最新版へ必ず差し替えましょう。

医療・金融・政治の追加認証要件

高リスク領域は、年齢・地域制限に加え、事前の認証や開示が求められる場合があります。医療分野では処方薬の宣伝は原則不可または厳格な制限下で、健康・ウェルネス表現でも誤認や過度な期待を与えない表記が必要です。

金融は利用者保護の観点から、広告主の実在性や提供条件、手数料・リスク開示の明確化が重視され、場合によっては追加の認証や証憑が必要になります。

政治・社会問題は対象国での広告認証や免責表記、広告ライブラリへの保存といった透明性要件が設定されることがあります。運用前に、対象国ごとの可否や手順、求められる文面・資料を一覧化し、年齢/地域設定、開示文、証憑の準備までを入稿テンプレートに組み込んでおきましょう。

 

領域 主な要件 ポイント
医療 処方薬宣伝の禁止/厳格制限、年齢・地域制限 国内ガイドラインと媒体ポリシーの二重適合
金融 広告主認証や開示強化、誤認防止 実在性、提供条件、リスク開示の明確化
政治 認証・免責表記・ライブラリ保存(対象国) 国別の要件と表示ルールを遵守
  • 事前準備→年齢/地域設定、認証可否、開示文面、必要な証憑の4点をテンプレ化
高リスク領域の運用
対象国要件と国内法を二重チェックし、入稿前に年齢・地域・開示・証憑の「4点セット」を確認しましょう。

ターゲティングと属性・差別表現範囲

広告文で「あなたは○○の人」「○歳の女性だから」など、個人の特性を断定・示唆する表現はポリシー違反です。人種・民族・宗教・年齢・性的指向・性同一性・健康状態・財政状態などの属性に触れて勧誘するのではなく、商品・サービスの価値や利用シーン、ベネフィットに焦点を当てた表現へ置き換えます。

さらに、住宅・雇用・信用などの特別な広告カテゴリでは、違法な差別を防ぐため詳細ターゲティングが制限され、年齢や性別での絞り込みが許可されない、または狭めにくい設計になっています。

運用では、地域・言語・興味関心の設計を見直し、広告文から個人属性の直接言及を外すこと、差別的ニュアンスが紛れ込まないことをダブルチェックしましょう。

 

項目 NG例 代替表現
個人の特性 「あなたは糖尿病なので…」「○歳の女性に最適」 「多忙な方へ」「屋外作業の方に人気」など状況ベース
差別的示唆 属性で除外/優遇を連想させる文言 商品特性の訴求に限定し、属性判断を回避
特別カテゴリ 年齢/性別での絞り込み(住宅/雇用/信用) 制限に準拠した広めのオーディエンス設計
  • 言語ターゲット→日本語圏向けに明確化し、表現の意図と対象をすり合わせる
表現の最終チェック
個人属性の直接言及は避け、広告文・画像・CTAの全体から差別的ニュアンスを除去。特別カテゴリの制限を必ず確認しましょう。

審査運用・申請フローと再提出

広告審査は「準備→入稿→審査→結果通知→対応→再提出→配信再最適化」の循環で運用するのが安全です。止まりやすい箇所は、入稿形式やメタデータの不整合、リンク先の表記不足、アカウント状態(権限・支払い・本人確認)です。

まず入稿前点検でリスクを洗い出し、審査中は結果が来る前に差し戻し時の代替クリエイティブを用意しておくと配信の穴が減ります。結果通知は見落としやすいため、管理画面とメール/アプリ通知の両方で監視。

差し戻し時は理由を「表現・権利・技術・アカウント」の4象限で記録し、修正→再提出→再発防止まで一連のログを残します。運用の肝は、軽微修正で通す“B案”の常備と、再提出までの動線を標準化することです。

 

フェーズ 目的 主な作業
準備 不承認リスクの低減 表現・権利・リンク先・アカウント状態の事前点検
入稿/審査 要件適合の確認 形式/メタデータ整合、通知監視、B案の用意
再提出 復旧と学習維持 理由の特定→一点修正→変更履歴の保存
  • 入稿前→チェックリスト運用で属人化を防止。
  • 審査中→結果別の対応テンプレを用意して即応。
  • 再提出→修正は最小限にし学習リセットを回避。
運用の型
「B案の常備」「通知の二重監視」「変更履歴の台帳化」をセットにすると、差し戻しによる機会損失を抑えられます。

入稿形式・メタデータ・リンク先整合

不承認の定番は、広告素材とリンク先の整合不足です。画像/動画の比率や容量、テキスト内の主張とLPの表記、CTAの文言、計測タグやU TMの付与状況、OG/Twitterカードのメタ情報などを入稿前に突き合わせます。

リンク先は会社名・住所・連絡先、プライバシーポリシー、利用規約、返金・解約条件などの“判断情報”を明示し、広告の主張・数値・注意書きをLPで繰り返し提示します。

計測都合でリダイレクトを挟む場合は、HTTPS一貫・遷移速度・モバイル最適を確保。動画は字幕/サムネ/冒頭フックの整合まで見ると離脱を抑えられます。入稿は最小単位で試し、通過後に横展開すると差し戻しの影響を局所化できます。

 

項目 見るべき点 確認方法
形式 比率・容量・長さ・字幕/サムネの整合 媒体推奨のプリセットで書き出し→テスト表示
メタ タイトル/ディスクリプション/OGの一致 シェアデバッガ/プレビューで表示確認
リンク先 運営者情報・ポリシー・CTAの明確さ モバイル速度・SSL・表示崩れの確認
  • 計測→UTMは簡潔にし、遷移後の自動リダイレクトを最小化。
  • 可読→LPのキーメッセージは広告と同じ語句で再掲。
整合チェックの要
「広告の主張=LPの主張=メタ情報」をワンセットで合わせると、審査とUXの両面で通りやすくなります。

アカウント状態と申請権限の整備手順

申請が進まない原因の多くは、アカウント側の未整備です。ビジネス設定で、人・ページ・広告アカウント・Instagram・ピクセル/カタログの紐づけを確認し、入稿担当には必要な役割(管理者/広告主等)を割り当てます。

本人確認・ビジネス情報・支払い設定は請求情報と完全一致に統一。過去の違反や制限の有無、未払いがないかも画面で点検します。

代理店運用では「パートナー追加」でアセット単位の権限共有を行い、誰が何を持つかを台帳化。二要素認証やログインアラートを有効にして、審査中の再ログインや権限エラーを防ぎます。変更はスクリーンショットで残し、次回以降のトラブルシュートに活用しましょう。

 

画面 確認内容 落とし穴
ビジネス設定 人/ページ/広告アカウント/IG/ピクセルの紐づけ アセット割当の漏れで入稿先が出てこない
請求と支払い 支払い方法・住所・会社名・未払い 表記ゆれで保留、限度額到達で失敗
アカウント状態 警告・機能制限・過去の違反 軽微な違反の累積で露出制限
  1. 権限/アセットの棚卸し→不足を付与。
  2. 本人確認・支払い・ビジネス情報の一致を確認。
  3. 未払い/違反なしを確認→入稿テスト。
権限設計のコツ
請求担当=管理者、入稿担当=広告主、閲覧=アナリストの三層で役割を固定すると、申請時の行き止まりを防げます。

審査連絡と申立て・異議申請の流れ

審査結果は管理画面の通知とメールで届きます。内容は「承認」「制限つき承認」「不承認」に大別され、不承認には理由カテゴリが付与されます。まずは理由を読み取り、該当箇所(表現・権利・技術・アカウント)を特定。

誤判定の可能性がある場合のみ異議申請を行い、補足情報や根拠資料(権利許諾・数値の出典など)を添えます。審査チームは広告全体(文言/画像/動画/リンク先)を見て判断するため、一部のみ修正しても整合が崩れると再度差し戻されます。

異議が認められない場合は、方針を変えたB案に切り替える方が早い場合があります。通知の見逃しを避けるため、メールのフィルタとアプリ通知を有効化しておきましょう。

 

ケース 対応 ポイント
誤判定の疑い 異議申請で再審査 根拠資料と変更履歴を添えて説明
明確な不備 該当箇所を修正→再提出 広告とLPを同時に整合させる
繰り返し不承認 B案へ切替 訴求・表現・CTAを再設計
  • 異議は“誤判定”に限定し、主張ではなく事実で説明。
  • 返信には期限があるため、テンプレ文面を用意。
注意ポイント
同一表現での再申請は履歴で追跡されます。根拠提示かB案切替のどちらかに早めに舵を切りましょう。

差し戻し再提出と変更履歴の管理

差し戻し時は、理由を分解し「どの要件に、どの表現/設定が抵触したか」を一行で記録します。修正は最小限にし、学習リセットや配信停止を避けるため、クリエイティブ/テキスト/ターゲティング/リンク先の変更を一度に重ねないのがコツです。

再提出前にLP側も同時修正し、広告とLPの主張・注意書き・開示を完全一致に。ファイル名・バージョン・担当・差し戻し理由・修正点・再提出日時を台帳化し、週次で傾向を可視化します。傾向が「表現系」に偏るなら制作ガイドを改定、「技術系」に偏るなら入稿テンプレを改善するなど、恒常対策へつなげます。

 

差し戻し理由 修正箇所 再提出のポイント
表現/誇大 文言・画像・CTA 断定回避・注意書き追記・数値の根拠明示
権利/素材 音源・画像・商標 許諾書の確認・代替素材へ差し替え
技術/リンク先 メタ・SSL・表示速度 HTTPS一貫・OG更新・モバイル最適化
  • 命名規則→「日付_案件_目的_B案v2」のように統一。
  • 台帳→スプレッドシートで履歴を一元管理し、再発箇所を特定。
再提出の最短ルート
修正は一点集中→即テスト→変更履歴を更新。通ったB案を標準化し、次回以降の初回審査通過率を底上げしましょう。

まとめ

審査を通す鍵は、①権限・所有権・支払いの整備、②本人確認とビジネス情報の一致、③ポリシーと表現の適合、④入稿形式とリンク先の整合、⑤差し戻し時の迅速な再提出です。章別チェックをテンプレ化し、提出前に必ず全項目を点検する運用へ。これで「申請できない」を継続的に減らせます。